デジタルでイラストを描くうえで、作業効率を上げるためにあると便利なアイテムである左手デバイス。その左手デバイスでもお絵かきソフトに対応してるもの、してないもので別れます。
公式で対応していると表記されてるソフトなら問題ありませんが、自分の使っているソフトが書かれていない場合は、実際に使えるのかどうかわからないために購入をためらってしまいます。
イラスト制作ソフトの中でも有名なフォトショップなどはどんな会社の製品でもだいたいは対応していると思います。しかし日本で人気のClip Studio Paint(クリスタ)は対応していない場合もたびたびあります。
そして今回ご紹介するLoupedeckもまた、公式では対応されていないタイプの左手デバイスです。
そんなLoupedeckをクリスタで6か月間使用してみましたので、メリット・デメリットなども含めてまとめていきます。
CLIP STUDIO PAINTで使えるのか?
結論から言うと、使えます。
それも他の左手デバイスではできないようなことまでできる、唯一の左手デバイスです。
僕は今までに4種類ほど左手デバイスを使ってきました。パソコンにもともとついてる基本的になんでもできるキーボード。初めて買った左手デバイスのLOGICOOL G-13にクリスタ専用のタブメイト、そしてBitTradeOneのRev-O-mate。みんな機能も形も、持ち方すら違うタイプのデバイスです。
しかし、基本的にできることは同じです。
そしてLoupedeckCTもまた、同じことがすべてできます。それ以上に。
他のデバイスにない拡張性
Loupedeckの特徴というと、なんといっても拡張性の高さだと思います。
20個の物理的なボタン、左右にある6個の小さいダイヤルに筐体下部にある大きいダイヤル、そして筐体上部にある12マスのタッチパネル。これだけでもボタンの多さに目を見張ると思います。
物理ボタンでも緑色の○のホームボタン、エンターキー、修繕キー用切り替えボタン、Fnキーはカスタムできませんが、そのほかの1~8、Undo・Save・A・B・C・D・Eのキーは好きにカスタム可能です。
また、Fnキーを押すことで違うキーを当てることができるので、物理ボタンだけでも最大30種類のキーを設定できます。
左右にあるダイヤルも押し込むことでボタン押せるので、ダイヤルを回して拡大縮小・ダイヤルを押し込んで全体表示など、ダイヤル1つでも一つの動作を完結することができます。
そしてLoupedeckCTの1番の魅力がタッチパネルです。
タッチパネル
このタッチパネルはタッチしてのキー入力はもちろん、上下左右に指を動かす(スワイプ)ことでも使うことができます。12か所に好きなようにキーを割り当てても、左右にスワイプすることで違うパネルを呼び出すことが可能です。
簡単に言うと、ノートのようにページが分かれており、めくることで新しいページを開くことができるのです。
このページ数は全部で14枚まで増やすことができますので、そのすべてを使用した場合は168種類ものキーを割り当てることができます。
そして次は上下のスワイプです。上下にスワイプすることで、今度は左右のダイヤルに割り当てているキーを変更することが可能です。例えば最初のページにはイラスト制作に使うキーを割り当てて、2枚目にはパソコンの音量変更や曲の変更、配信もしていたらマイクの音量の変更など、入れておくことができます。
イラスト制作においては特に大きなメリットはありませんが、写真の現像などのダイヤルを多用する作業にはとても便利な機能だと思います。
LoupedeckCTをCLIP STUDIO PAINTで使えるようにする
最初にも言っておりますが、クリスタは公式に対応しているソフトではありません。ですが対応してなくてもソフトウェアからクリスタを認識させることがきるので問題なく使用できます。
Loupedeckに関していいますと、公式で「対応している・してない」の大きな違いは、は大きいダイヤルのタッチパネル部分などを有効活用できるかできないか、の部分が大きいかと思います。
公式に対応しているソフトウェアには最初から様々な機能が設定作られているので、それを自分の好きな位置に配置するだけで使うことができます。フォトショプなんかは大きいダイヤルにカラーサークルなどを表示して操作もできそうですが、実際のイラスト制作時にわざわざ左手デバイスで色を選ぶことはないので気にしなくて大丈夫です。かわりに大きいダイヤルの中もタッチパネルで最大4種類のキーを割り当てることができるので、これだけで十分です。
プロファイルの割り当て
Loupedeckのソフトからメインプロファイル→アプリケーションプロファイル右側の「・・・」→右上の「+」→CLIP STUDIO PAINTの順番で選択すれば認識します。すべて日本語に翻訳されてるので見ていけばわかるかと思います。
そしたらメインプロファイルにCLIP STUDIO PAINTを選択すれば、クリスタの起動時に勝手にプロファイル変更してくれるようになります。
Loupedeckのとても良い機能の一つが他の左手デバイスにはあまりないプロファイルの自動変更です。自分が使うソフトのプロファイルを作っておけば、ソフト起動時、およびウィンドウ切り替え時に自動でプロファイルが切り替わってくれます。そのためソフト毎にプロファイルを入れ替える必要がないので、これ1台で複数のソフトを行き来することができます。
線画はクリスタ、着彩はフォトショップなど、役割毎にソフトを切り替える人にとってはとてもいいデバイスだと思います。
ワークスペース
プロファイルの次に必要なのがワークスペースです。ワークスペースの意味通り、これがLoupedeckの作業環境を変更する部分になります。
さきほどプロファイルを設定したことにより、そのソフト専用のボタン配置ができるようになりました。ここでボタンやダイヤル、タッチパネルにそれぞれのキーを割り当てたり、専用のマクロを組んで割り当てたりすることができます。
自分で新しいマクロを作るときに名前やアイコンの変更などができます。内容を一目でわかるようにするためのものですが、アイコンを設定することでタッチパネルでの表示を文字ではなく絵で表現できるので、自分好みの液晶にカスタムすることができます。アイコンを設定しない場合はそのまま文字で表示されるようになるので、普段使わない機能などは文字のままにしておくとわかりやすいと思います。
こういうところもカスタムできるのは液晶搭載モデルならではですね。
作ったマクロはフォルダにまとめて管理できるので、ブラシ用のマクロはブラシフォルダに、レイヤー用のマクロはレイヤーフォルダに、といった感じでまとめておくと後で割り当てるときにスムーズに作業することができます。
キーの割り当て
左側のLoupedeck本体の写真のボタンを押せば、そのボタンに割り当てられているキーを表示できます。ここに先ほど作ったマクロ等を右の部分からドラッグして割り当てていきます。何も割り当てていない場合はそのままボタンの位置に持っていくだけでも自動で割り当ててくれます。ただしFnキーを押している時の割り当ては上記のようにスペースを表示してから割り当てることになりますので注意してください。
設定したものを実際に使ってみて、それが少し合わないなと思った場合は、既に割り当てているキーをドラッグして移動させればそのままキーの割り当てができます。なので一回一回右側からドラッグしてくる必要はないので、覚えておくと調整がしやすいです。ただし移動したら元の場所のキーは残らずに無効になるので、同じキーを追加で増やしたい場合は右側から持って来ましょう。
一度マクロを作ってしまえば、あとは自由自在にマクロを入れ替えれるので調整もスムーズにできるのでいいですね。ソフトの起動も早いので、起動してなくても数秒もあれば欲しい機能を割り当てることができます。
そしてこれはLoupedeck唯一の欠点ともいうべきか、プロファイル1つに対して筐体下部の物理キーの割り当ては1種類だけになっております。
ワークスペースを「線画用・塗り用・マンガ用」と何個も作った場合でも、変更されるのはタッチパネルとダイヤルの部分だけになっております。つまり筐体下部の物理ボタンは全部のワークスペースで共通した割り当ての物しか使えない、ということです。
なのでこちらに割り当てるキーはコピー&ペーストや保存など、どの作業でも必要となるキーを割り当てておくと使いやすいです。逆に行ってしまえばそういうのがいらない人にとってはLoupedeckCTではなく、筐体下部が無い代わりに値段も半分くらいになっているLoupedeck Liveを使ってもらえればいいかと思います。
CLIP STUDIO PAINTでの使用感
CLIP STUDIO PAINTで使用する場合はまず、ブラシや消しゴムなどのマクロを作るところから始まります。とりあえず鉛筆系や筆系、消しゴム、ぼかしなど、それぞれのカテゴリーのものをショートカット一覧から割り当てて作っておきましょう。クリスタ自体にもショートカットを割り当てる部分があるので、割り当てがなければそこでショートカットを作っておくとLoupedeckも使えるようになります。ダイヤルに割り当てるマクロもそれぞれ作れるので、拡大縮小やブラシサイズの変更、キャンバスの回転なども作っておくと便利です。それから使ってみて、コレあった方がいいな!と思ったマクロを作って入れて、といったように、徐々に使えるキーを増やしていくと慣れやすいと思います。
最初は公式でもあるように下の大きなダイヤルを中心に手を置いて使っていましたが、これだと筐体下部の物理キーにしか手が届かず、ブラインドタッチでの使用が難しいことから、今は上記の写真のように液タブ上に置いて、筐体左側のダイヤルをメインに持って使用しております。
そのままでは液タブの側面には置けませんので、100円均一で買ってきたブックエンドにカバーとクッションを自作して固定できるようにしてあります。
Wacom Cintiq Pro 24以上のモデルには、液タブの側面のフレーム内に磁石が内臓されているので、ステンレス製のブックエンドは液タブにくっつきます。擦れて傷がつかないように、また、カバー表面にマジックテープのくっつくタイプの素材を使用しておりますので、クッションの位置を自由に変更でき、結果としLoupedeckCTの位置も調整することができます。
ダイヤルをメインで使う持ち方にしてあるので「キャンバスの拡大縮小・ブラシサイズの変更・作業の取り消しとやり直し」に素早くアクセスできて、作業効率が少し上がりました。ダイヤルのボタンすべてにキャンバスをつかむ機能を入れてるので、場所関係なしに自由にキャンバスの位置を変更できます。
1~4番の数字のボタンにはそれぞれ「鉛筆・消しゴム・筆・ペン」のブラシを割り当てているので親指の動かす範囲内でブラシの変更も可能になっております。もしも他にも必要なブラシがある場合はタッチパネルの左側縦列のどこかに割り当ててもらえれば作業がしやすくなります。
また、このポジションで持っている場合は親指が大きいダイヤルに届くので、そこに「キャンバスの回転」を入れ、中のタッチパネルに「左右反転・回転のリセット・選択解除」など、ちょっとした時にあると便利な機能を入れております。これを入れていることで微妙なストレスの軽減に役立ちますので、とても快適に作業することができます。
Loupedeckの一番のメリットがこの「なくてもいいけどあると便利な機能をたくさん割り当てられる」です。考え方次第で本当になんでも作れるので重宝します。
「クリスタの起動から最新の保存したファイルを開く」までの一連の動作もボタン一つでできますし、「保存からパソコンの電源を切る」までも一つのボタンでできるようにすることもできます。もしもテンキーレスのキーボードを使っている場合は、タッチパネルに数字キーを入れておくことでテンキーボード代わりにすることもできます。自由度がとてつもなく高いのがこのLoupedeckになります。
特に公式に対応しているわけでもないクリスタですが、このように痒いところに手が届く機能を自分で作れますので、コレさえあれば他の左手デバイスはいらないといえるほど便利な左手デバイスです。クリスタでもフォトショップでも、何かを制作してる人にとってはこれが一番の左手デバイスになると思います。
LoupedeckCTのメリット
ボタンとダイヤルの数が多い
カスタマイズできる範囲が非常に多く、左手デバイスのなかでは自由度が一番高い
プロファイルの自動変更をしてくれる
薄くて軽量、そしてアルミフレームの高い剛性
タッチパッドにもなるのでマウスとしても使える(マウスホイール等のボタンも設定可)
8GBの外部メモリーにもなる(実質7GB)
まだできないが、アップデートでBluetooth接続可能になる。(予定)
LoupedeckCTのデメリット
価格が69,980円ととても高い
自由度が高すぎて慣れるまでに1か月近くかかる
小さいダイヤルのボタンが固く、クリック感のあるダイヤルの耐久力が不明
まとめ
メリットに対してのデメリットが価格や自由度の高さゆえの不便さくらいしかありません。ダイヤルに関してはよく使う拡大縮小を割り当ててるダイヤルのクリック感が、半年で他のダイヤルよりも軽くなった感じがします。そのため。これらの耐久性に関しましては使い込んで確かめてみるしかありません。もしタブメイトのように、本体の質は良いけど耐久性が低く、数か月~1年くらいで壊れるのであれば、買わない方がいいかもしれませんね。とりあえず今のところは不具合などもないので、とても使いやすい左手デバイスだなと思いました。
この左手デバイスは本当に買ってよかったと思います。それくらいオススメのガジェットです。
値段が高いけど、Loupedeckは使ってみたい…!という方がいらっしゃいましたら、Loupedeck Liveという、LoupedeckCTに比べたらボタンの数が少なくなっていますが、値段も半分近くまで安くなっているモデルがありますので、そちらを検討してみるのもいいのかな、と思います。
また、近々このLoupedeck Liveよりも安くなった入門機も発売されるそうです。こちらはいまクラウドファンディングが始まる前で、今なら普通に買うよりも安く手に入りますので、試しに買ってみるのもいいかと思います。タッチパネルでできることが増えてるので、ある意味こっちの方が絵を描くにはいいかもしれませんね。
一応こちらもリンクを貼っておきます。
Live Sの写真にクリスタのロゴを見かけたので、もしかしたら近いうちに公式に実装されるのかもしれませんね。正式に対応したら今できない機能も使えることができるので楽しみです。
Loupedeckはサマーセールやブラックフライデーセールで安くなることがあります。LoupedeckCTもセール時は61,000円で販売されている時があるので、そういう時を狙ってみるのもいいかもしれませんね。